翻訳家の浅羽莢子さんがお亡くなりになったそうです。
一昨日、知人の作家さんの日記で知りました。
ご病気だったそうですが、誰にも病気のことは言わずに仕事を続け、遺書もきちんと整えて、いさぎよい終末だった、とのこと。

浅羽さんとは、パーティの二次会でたまにおしゃべりするくらいの間柄で、ここ数年はパーティでお見かけすることもなかったので、お会いする機会はないままでした。でも、とてもとてもパワフルで、明るくて、賑やかで、自信に満ちあふれた女性で、彼女から元気をもらった、という人は業界にもたくさんいたと思います。
何より、翻訳者として、本当に素晴らしい才能をお持ちでした。

わたしにとっては特別な作家であるジョナサン・キャロルも、浅羽訳でしか読んだことがありません。繊細で微妙な言い回しや、言語遊戯等、訳文で読んでも奥の深い、ある意味難解な、そして別の意味ではポップなキャロルの文章を、あれほど的確に訳すその力量には、いつも圧倒され、尊敬していました。
その一方、ジル・チャーチルなどの軽妙でわかりやすい、親しみやすい訳文。テンポもよく、読み手がまったくストレスを感じないで楽しく読み進めるように工夫された、プロの技の数々。
他にも挙げればきりがありません。
翻訳物のエンタテインメント小説をそれなりの量、読んでいる人で、浅羽訳を目にしたことがない、という人の方が、きっと少ないでしょう。

大きな星がひとつ落ちた。そんな思いにとらわれています。
とてもとても、さびしいです。

心より、御冥福をお祈りいたします。