同業者である以上、新しくデビューして来る作家さんたちの作品が気掛かりなのは当然のこと、ですが、他人の作品ばかり気にしていては、自分の作品世界を見失うことになるのもまた事実。なので、どんなにすごい才能を持つ人がデビューして来たとしても、それでおたついていてはいけないのだ、と、つっばって10年やって来たわけですが。
数年に一度は、こういう経験をします。
とてつもない才能。
わたしにとっては、この本の作者の持っている「力」ははかり知れません。
ただ、これは一般受けのする才能なのかどうか、それは判断ができません。
この作品自体、誰にでも「いいわよ〜、おすすめ」と気軽に言えるようなものではないと思うし。
ダークな話は苦手、という人だけではなく、ホラーやスプラッタが大好きでも、心の奥底に針を刺すような「痛み」は苦手、という読者も多いはず。
非常に凝ったつくりの作品なので、ネタバレにならないようにレビューを書くのは困難です。
なので、歯がゆいのですが(笑)
とにかく、絶望が描かれています。救いようのない、哀しい絶望です。
それなのに、最後の最後に、もしかしたら作者すら気づいているのかどうかわからない形での、確かな「希望」が姿を見せます。
人の子の親としてこの作品を読む時、ただひたすら、そのかすかな「希望」にすがりたい、そんな気持ちになります。
同時に、この作品はやっぱり、推理小説、それも、極めて本格度の高い小説だとも思います。
つまり、謎解きは用意されています。ただ、読者が解くべき謎は……おっと(^^;
お読みになる方は、覚悟を決めて、先まわりせず、物語に身を任せてください。
その方が、きっと、「希望」の姿を見失わずに読了できると思います。
『向日葵の咲かない夏』
道尾秀介
新潮社
ISBN1-10-300331-6
1600円+税
読了5(国内5)
